「脳」ひらめきと記憶の正体
- 2018/02/06
- 12:50
Nスペ「人体」
第五集
「脳」ひらめきと記憶の正体
お笑い芸人で芥川賞作家「又吉直樹」の脳は
どうなっている?
世界最高性能のMRI(MAGNETOM 7T MRI)で
調査しました。

全体が「たわし」のようなものが見えます。
中のケーブル状のものが神経細胞の束です。
今回の解析により
一般的平均的なデータとは明らかに違うと
いう部分が見つかりました。
普通の人の3割増の大きさがあるそうです。
(2万人にひとりのクラス)
それは、「縁上回」と呼ばれている部分で
言葉を司ると言わています。
ここからが本題

これは、神経のネットワーク
ひとつひとつの細い線維は、神経細胞です。
山中メモ
脳の神経細胞は、およそ1000億個
それが繋がってネットワークを作っている。
又吉の脳から探る
ひらめきの極意とは
又吉は、アイデアに詰るとしばしば散歩に
出かけます。
目に入る様々な風景が、ひらめきのヒントを
与えてくれるそうです。
何かを見た瞬間
脳の中では何が起きるのか?
ある人を見た瞬間、脳の中に電気信号が
走ります。
最初に反応するのは、目から入ってきた
情報を受け取る「視覚野」
「視覚野」では目から入った映像の大まかな
輪郭を捉えているといわれます。
↓
そのあと信号が行くのが「側頭部顔領域」
ここで顔の識別をします。
↓
さらに、信号は「前頭前野」へ行きます。
ここでは顔を見たときに湧き上がる感情
をコントロールしているといわれます。
これだけの処理をわずか0.2秒で行って
います。
電気信号の伝わり方
脳のネットワークの中に網の目のように
あるのが神経細胞です。
細長い細胞から細胞へ電気信号がリレー
されていきます。
しかし、細胞と細胞の間には少し隙間が
あります。
この隙間をつなぐのがメッセージ物質です。
メッセージ物質が次の細胞に受け取られる
ことにより、再度、電気信号が発生します。
細胞と細胞との間は、電気信号に代わって
メッセージ物質が情報を伝えているのです。
その間の時間は、わずか1万分の1秒です。
メッセージ物質を使う理由
脳では、メッセージ物質を数十種類も用いる
ことで、電気信号の伝わり方に様々な
バリエーションを生み出しています。
1000億の神経細胞とメッセージ物質が作る
複雑な仕組み(ほぼ無限)が
ひらめきを生み出すカギになります。
脳は、脂肪細胞が出すレブチンを受け取り
食欲をコントロールするように
他の臓器からメッセージ物質を受け取り
ますが、脳独自のネットワークもあります。
先に見た、タワシのようなネットワークです。
山中メモ
様々な発見や科学技術の進歩は
メッセージ物質を使う脳の柔軟性のおかげ
と言えます。
ひらめきの秘密(電気信号の流れの違い)
集中している時
↓
電気信号の流れは、こま切れ
ひらめいた時
↓
電気信号の太い幹が生まれ
全体をつなげている
ひらめく脳を作り出す方法
何も考えない?
何も考えない時の又吉の脳の中
↓
ひらめいた時と同じ電気信号の流れに
なっていたのです。
デフォルト・モード・ネットワークとは
ドレクセル大学
ジョン・クーニオス教授
(長年、ひらめきの正体を研究)
問題の解決策が、突然頭にひらめくこと
があります。
まったく関係ないことをしている時
例えば、朝目覚めてぼーっとしている時など
に起こるのです。
私たちはその状態を
デフォルト・モード・ネットワーク
(何もしていない状態)と呼んでいます。
「何もせず、ぼーっとすること」がとても
重要だという結論にたどり着いたのです。
電気信号の伸びていく先には、脳の表面に
ある大脳皮質と呼ばれる場所が広がっています。
ここには、記憶の断片が保管されています。
私たちの脳は、「ぼーっとしている時」にこそ
記憶の断片を自由自在につなぎ合わせ、新しい
発想を生み出していると考えられています。
山中メモ
デフォルト・モード・ネットワークは、脳が使う
全エネルギーの7割を消費しているとも言われ
ます。
ひらめきの極意は、「ぼーっとした状態」で
大脳皮質に散らばっている記憶を結びつける
ことです。
そのためには、記憶の断片をしっかり蓄えて
おくことが必要になります。
記憶力を高める極意
スーパーレコグナイザーとは
ケネスロングさんは、イギリス(ロンドン)で
警察が指名手配したテロリストの顔を記憶し
群衆の中から見つけ出す仕事をしています。
人の顔を一度見たら忘れないという、並外れた
能力を持つスペシャリストの一人です。
人の顔を記憶するときの脳の働きは?
ケネスロングさんの脳をMRIで調査
(実際に顔を記憶する過程で)しました。
活発に反応していたのは「歯状回」という
部分でした。

歯状回は、脳のネットワークの真ん中
海馬の中にあります。
並んだ細胞が歯のように見えることこと
から名付けれました。
歯状回がどのように記憶を作り出すのか?
目が顔を捉えると、情報は電気信号となり
歯状回に伝わります。
↓
歯状回の細胞が電気を発生させ次の細胞へ
伝えます。
↓
さらに、次の細胞へとリレーされます。
電気信号が流れる1つのルートが出来あがり
ます。
この電気信号のルートこそが記憶の正体で
1つのルートに1つの記憶が対応すると考え
られています。
歯のように並んだ歯状回の細胞が次々と
入ってくる情報を異なるルートに振り分ける
ことで様々な記憶が作り出されていきます。
こうして作られた記憶は、数年のうちに脳の
表面にある大脳皮質へと移され、生涯にわたり
蓄えられると考えられています。
歯状回の活動を活発にして
記録力をアップさせる方法
ソーク研究所(米国サンディエゴ)
フレッドゲージ教授(長年、記憶の謎を研究)
歯状回で新しい細胞が次々と生まれている
ことを突き止めました。
歯状回で生まれる新しい細胞こそ記憶力を
アップさせる決め手になります。
フレッドゲージ教授談
生まれたばかりの細胞はとても敏感ですぐに
電気を発生させるため、わずかな刺激にも反応
します。
以前は信号の通っていなかった場所に、まったく
新しいルートを次々と作り出していけるのです。
つまり、生まれたばかりの新しい細胞があれば
あるほど、私たちは記憶力を高めていけるのです。
どうしたら新しい細胞を増やせるのか?
カギを握っているのは、全身の臓器が脳に
向けて送っているメッセージ物資です。
例えば、食事をしたときすい臓から出る
インスリンは、脳に記憶力をアップせよと
メッセージを伝えます。
インスリンが脳に届いている時と、届いて
いない時とで歯状回の細胞の成長に大きな
差がでます。
すい臓からのメッセージが新しい細胞の
成長を促し、記憶力をアップさせる可能性が
あるのです。
さらに、筋肉の出すメッセージ物質
カテプシンBも歯状回で新しく生まれる細胞を
増やす働きがあると考えられています。
バランスのとれた食生活ですい臓を健康に保つ
こと、体を動かして筋肉を鍛えることが記憶力
アップの秘訣だと考えられはじめています。
山中メモ
食べものを得た時に出るインスリンが記憶力
アップにつながるように脳は進化した可能性
があります。
認知症
タワシのような脳のネットワークが蝕まれ
記憶などを失っていく病気です。
認知症のなかで最も大きな割合を占めるのが
アルツハイマー病です。
アルツハイマー病
アミロイドβというたんぱく質が、神経細胞を
壊すことで起きると考えられています。
これまでアミロイドβを分解する薬は作られて
きましたが、薬を投与しても脳の神経細胞まで
届けられないという難題がありました。
脳の血管の特別な仕組み
脳の血管の壁にはほとんど隙間がなく、薬を
脳へと送り込むことができません。
なぜなら、容易に進入を許せば、脳は大混乱と
なってしまうからです。
メッセージ物質の中で脳の血管の壁を突破
できるのはごく一部、インスリンのように
特別な役割を持つ物質だけです。
脳が自らの機能を守るために発達させて
きた関門のような仕組み、それが認知症の
薬を送り込む上で大きな壁となっています。
どうすれば薬を脳に送ることができるのか?
カリフォルニア大学ロサンゼルス校
ウィリアムパードリッジ(名誉教授)
アルツハイマー病の薬を開発する上で注目
したのが、脳の血管の壁を通ることを許さて
いるインスリンでした。
インスリンが脳の血管の壁を通る仕組み
メッセージ物質が血管の壁を通過する時
カプセルのような薄い膜に包まれて脳の
中へ運ばれていくのが確認されました。
脳の毛細血管の中には、様々な物質が流れ
てきますが、インスリンがすい臓から流れて
きた時、血管の表面の小さな突起にインスリン
が付いて、まるで秘密の扉が開くように
壁が陥没して、カプセル状の膜に包まれた
インスリンが血管の壁を突破していくのです。
インスリンを運ぶカプセルをうまく利用する
ことで、認知症の薬を脳まで運ぶ
ブラジル(ポルトアレグレ)での臨床試験
認知症の薬を開発するための重要な試験
アルツハイマー病と多くの共通点が指摘
されるハーラー病
ハーラー病とは
GAGという物質が子供の脳にたまり
神経細胞のネットワークが蝕まれ、認知
機能や運動機能に障害が出る難病です。
薬の投与方法
GAGを分解する薬を脳へと送り込むため
インスリンが壁を通り抜ける時に登場した
突起にくっ付く性質を持つ物質を用意しま
した。この物質にGAGを分解する薬を合体させ
脳へ送り込もうという作戦です。
点滴で薬を血液の中へ注入します。
脳の毛細血管に到達すると、薬が突起に
くっ付きます。
突起はインスリンが来たと勘違いし、壁から
通過していき、病気の原因のGAGを分解して
いきます。
この方法は、大きな成果をあげています。
劇的に症状が回復している
(表情が豊かになり、母親とも気持の交流が
できるようになった)子供の様子が紹介され
ていました。
認知テストの結果(薬の投与前との比較)でも
8人の患者のうち7人に改善が見られました。
ウィリアムパードリッジ(名誉教授)の話
この戦略は、多くの製薬会社からも注目され
ています。
間もなくたくさんの資金が集まり、臨床試験も
盛んに行われるようになるでしょう。
新たな発見
ウプサラ大学(スウェーデン)
質量分析加速器で人間の脳の細胞を分析
することで、その細胞がいつ生まれたのか
を割り出す実験をしています。
ここで、最近新たな発見がありました。
健康的な人の脳では90歳近くまで
細胞(歯状回)が生まれていることが
わかったのです。
カロリンスカ研究所
ヨーナスフリゼン(教授)の話
本当に驚きでした。
マウスでは、年をとると新しく生まれる
細胞は急激に減っていくのですが
人間では、それが起きていなかったのです。
年をとっても高い認知機能を維持できる
よう、人間の脳は進化しているのではないか
そう私たちは考えています。
まとめ
脳は、ネットワーク中のネットワークで
全身のネットワーク(の物質)を取捨選択
することができます。
やっぱり、脳はすごかった!
以上
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第五集
「脳」ひらめきと記憶の正体
お笑い芸人で芥川賞作家「又吉直樹」の脳は
どうなっている?
世界最高性能のMRI(MAGNETOM 7T MRI)で
調査しました。

全体が「たわし」のようなものが見えます。
中のケーブル状のものが神経細胞の束です。
今回の解析により
一般的平均的なデータとは明らかに違うと
いう部分が見つかりました。
普通の人の3割増の大きさがあるそうです。
(2万人にひとりのクラス)
それは、「縁上回」と呼ばれている部分で
言葉を司ると言わています。
ここからが本題

これは、神経のネットワーク
ひとつひとつの細い線維は、神経細胞です。
山中メモ
脳の神経細胞は、およそ1000億個
それが繋がってネットワークを作っている。
又吉の脳から探る
ひらめきの極意とは
又吉は、アイデアに詰るとしばしば散歩に
出かけます。
目に入る様々な風景が、ひらめきのヒントを
与えてくれるそうです。
何かを見た瞬間
脳の中では何が起きるのか?
ある人を見た瞬間、脳の中に電気信号が
走ります。
最初に反応するのは、目から入ってきた
情報を受け取る「視覚野」
「視覚野」では目から入った映像の大まかな
輪郭を捉えているといわれます。
↓
そのあと信号が行くのが「側頭部顔領域」
ここで顔の識別をします。
↓
さらに、信号は「前頭前野」へ行きます。
ここでは顔を見たときに湧き上がる感情
をコントロールしているといわれます。
これだけの処理をわずか0.2秒で行って
います。
電気信号の伝わり方
脳のネットワークの中に網の目のように
あるのが神経細胞です。
細長い細胞から細胞へ電気信号がリレー
されていきます。
しかし、細胞と細胞の間には少し隙間が
あります。
この隙間をつなぐのがメッセージ物質です。
メッセージ物質が次の細胞に受け取られる
ことにより、再度、電気信号が発生します。
細胞と細胞との間は、電気信号に代わって
メッセージ物質が情報を伝えているのです。
その間の時間は、わずか1万分の1秒です。
メッセージ物質を使う理由
脳では、メッセージ物質を数十種類も用いる
ことで、電気信号の伝わり方に様々な
バリエーションを生み出しています。
1000億の神経細胞とメッセージ物質が作る
複雑な仕組み(ほぼ無限)が
ひらめきを生み出すカギになります。
脳は、脂肪細胞が出すレブチンを受け取り
食欲をコントロールするように
他の臓器からメッセージ物質を受け取り
ますが、脳独自のネットワークもあります。
先に見た、タワシのようなネットワークです。
山中メモ
様々な発見や科学技術の進歩は
メッセージ物質を使う脳の柔軟性のおかげ
と言えます。
ひらめきの秘密(電気信号の流れの違い)
集中している時
↓
電気信号の流れは、こま切れ
ひらめいた時
↓
電気信号の太い幹が生まれ
全体をつなげている
ひらめく脳を作り出す方法
何も考えない?
何も考えない時の又吉の脳の中
↓
ひらめいた時と同じ電気信号の流れに
なっていたのです。
デフォルト・モード・ネットワークとは
ドレクセル大学
ジョン・クーニオス教授
(長年、ひらめきの正体を研究)
問題の解決策が、突然頭にひらめくこと
があります。
まったく関係ないことをしている時
例えば、朝目覚めてぼーっとしている時など
に起こるのです。
私たちはその状態を
デフォルト・モード・ネットワーク
(何もしていない状態)と呼んでいます。
「何もせず、ぼーっとすること」がとても
重要だという結論にたどり着いたのです。
電気信号の伸びていく先には、脳の表面に
ある大脳皮質と呼ばれる場所が広がっています。
ここには、記憶の断片が保管されています。
私たちの脳は、「ぼーっとしている時」にこそ
記憶の断片を自由自在につなぎ合わせ、新しい
発想を生み出していると考えられています。
山中メモ
デフォルト・モード・ネットワークは、脳が使う
全エネルギーの7割を消費しているとも言われ
ます。
ひらめきの極意は、「ぼーっとした状態」で
大脳皮質に散らばっている記憶を結びつける
ことです。
そのためには、記憶の断片をしっかり蓄えて
おくことが必要になります。
記憶力を高める極意
スーパーレコグナイザーとは
ケネスロングさんは、イギリス(ロンドン)で
警察が指名手配したテロリストの顔を記憶し
群衆の中から見つけ出す仕事をしています。
人の顔を一度見たら忘れないという、並外れた
能力を持つスペシャリストの一人です。
人の顔を記憶するときの脳の働きは?
ケネスロングさんの脳をMRIで調査
(実際に顔を記憶する過程で)しました。
活発に反応していたのは「歯状回」という
部分でした。

歯状回は、脳のネットワークの真ん中
海馬の中にあります。
並んだ細胞が歯のように見えることこと
から名付けれました。
歯状回がどのように記憶を作り出すのか?
目が顔を捉えると、情報は電気信号となり
歯状回に伝わります。
↓
歯状回の細胞が電気を発生させ次の細胞へ
伝えます。
↓
さらに、次の細胞へとリレーされます。
電気信号が流れる1つのルートが出来あがり
ます。
この電気信号のルートこそが記憶の正体で
1つのルートに1つの記憶が対応すると考え
られています。
歯のように並んだ歯状回の細胞が次々と
入ってくる情報を異なるルートに振り分ける
ことで様々な記憶が作り出されていきます。
こうして作られた記憶は、数年のうちに脳の
表面にある大脳皮質へと移され、生涯にわたり
蓄えられると考えられています。
歯状回の活動を活発にして
記録力をアップさせる方法
ソーク研究所(米国サンディエゴ)
フレッドゲージ教授(長年、記憶の謎を研究)
歯状回で新しい細胞が次々と生まれている
ことを突き止めました。
歯状回で生まれる新しい細胞こそ記憶力を
アップさせる決め手になります。
フレッドゲージ教授談
生まれたばかりの細胞はとても敏感ですぐに
電気を発生させるため、わずかな刺激にも反応
します。
以前は信号の通っていなかった場所に、まったく
新しいルートを次々と作り出していけるのです。
つまり、生まれたばかりの新しい細胞があれば
あるほど、私たちは記憶力を高めていけるのです。
どうしたら新しい細胞を増やせるのか?
カギを握っているのは、全身の臓器が脳に
向けて送っているメッセージ物資です。
例えば、食事をしたときすい臓から出る
インスリンは、脳に記憶力をアップせよと
メッセージを伝えます。
インスリンが脳に届いている時と、届いて
いない時とで歯状回の細胞の成長に大きな
差がでます。
すい臓からのメッセージが新しい細胞の
成長を促し、記憶力をアップさせる可能性が
あるのです。
さらに、筋肉の出すメッセージ物質
カテプシンBも歯状回で新しく生まれる細胞を
増やす働きがあると考えられています。
バランスのとれた食生活ですい臓を健康に保つ
こと、体を動かして筋肉を鍛えることが記憶力
アップの秘訣だと考えられはじめています。
山中メモ
食べものを得た時に出るインスリンが記憶力
アップにつながるように脳は進化した可能性
があります。
認知症
タワシのような脳のネットワークが蝕まれ
記憶などを失っていく病気です。
認知症のなかで最も大きな割合を占めるのが
アルツハイマー病です。
アルツハイマー病
アミロイドβというたんぱく質が、神経細胞を
壊すことで起きると考えられています。
これまでアミロイドβを分解する薬は作られて
きましたが、薬を投与しても脳の神経細胞まで
届けられないという難題がありました。
脳の血管の特別な仕組み
脳の血管の壁にはほとんど隙間がなく、薬を
脳へと送り込むことができません。
なぜなら、容易に進入を許せば、脳は大混乱と
なってしまうからです。
メッセージ物質の中で脳の血管の壁を突破
できるのはごく一部、インスリンのように
特別な役割を持つ物質だけです。
脳が自らの機能を守るために発達させて
きた関門のような仕組み、それが認知症の
薬を送り込む上で大きな壁となっています。
どうすれば薬を脳に送ることができるのか?
カリフォルニア大学ロサンゼルス校
ウィリアムパードリッジ(名誉教授)
アルツハイマー病の薬を開発する上で注目
したのが、脳の血管の壁を通ることを許さて
いるインスリンでした。
インスリンが脳の血管の壁を通る仕組み
メッセージ物質が血管の壁を通過する時
カプセルのような薄い膜に包まれて脳の
中へ運ばれていくのが確認されました。
脳の毛細血管の中には、様々な物質が流れ
てきますが、インスリンがすい臓から流れて
きた時、血管の表面の小さな突起にインスリン
が付いて、まるで秘密の扉が開くように
壁が陥没して、カプセル状の膜に包まれた
インスリンが血管の壁を突破していくのです。
インスリンを運ぶカプセルをうまく利用する
ことで、認知症の薬を脳まで運ぶ
ブラジル(ポルトアレグレ)での臨床試験
認知症の薬を開発するための重要な試験
アルツハイマー病と多くの共通点が指摘
されるハーラー病
ハーラー病とは
GAGという物質が子供の脳にたまり
神経細胞のネットワークが蝕まれ、認知
機能や運動機能に障害が出る難病です。
薬の投与方法
GAGを分解する薬を脳へと送り込むため
インスリンが壁を通り抜ける時に登場した
突起にくっ付く性質を持つ物質を用意しま
した。この物質にGAGを分解する薬を合体させ
脳へ送り込もうという作戦です。
点滴で薬を血液の中へ注入します。
脳の毛細血管に到達すると、薬が突起に
くっ付きます。
突起はインスリンが来たと勘違いし、壁から
通過していき、病気の原因のGAGを分解して
いきます。
この方法は、大きな成果をあげています。
劇的に症状が回復している
(表情が豊かになり、母親とも気持の交流が
できるようになった)子供の様子が紹介され
ていました。
認知テストの結果(薬の投与前との比較)でも
8人の患者のうち7人に改善が見られました。
ウィリアムパードリッジ(名誉教授)の話
この戦略は、多くの製薬会社からも注目され
ています。
間もなくたくさんの資金が集まり、臨床試験も
盛んに行われるようになるでしょう。
新たな発見
ウプサラ大学(スウェーデン)
質量分析加速器で人間の脳の細胞を分析
することで、その細胞がいつ生まれたのか
を割り出す実験をしています。
ここで、最近新たな発見がありました。
健康的な人の脳では90歳近くまで
細胞(歯状回)が生まれていることが
わかったのです。
カロリンスカ研究所
ヨーナスフリゼン(教授)の話
本当に驚きでした。
マウスでは、年をとると新しく生まれる
細胞は急激に減っていくのですが
人間では、それが起きていなかったのです。
年をとっても高い認知機能を維持できる
よう、人間の脳は進化しているのではないか
そう私たちは考えています。
まとめ
脳は、ネットワーク中のネットワークで
全身のネットワーク(の物質)を取捨選択
することができます。
やっぱり、脳はすごかった!
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