骨が出す若返り物質
- 2018/01/09
- 20:00
Nスペ「人体」第三集
骨が出す最高の若返り物質
タモリ
骨なんて、体を支える単なる棒切れだと
思っていませんか。
どうやら、違うらしいんです。
何んと、脳や筋肉など全身の臓器に特別
な物質を届け、人体の若さを生み出して
いるのが骨だというのです。
ナレーター
カチカチのカルシュウムの固まりだと
思われがちな骨ですが、その中は以外
にも隙間だらけです。
そして、よく見るとそこにはたくさんの
細胞たちがうごめいています。
実は、この細胞たちが発している特別な
物質が、メッセージとして全身に届けら
れ、私たちの若さを生み出していること
が、最新の研究でわかってきたのです。
骨からのメッセージ物質が脳に届くと
何んと記憶力をアップ、さらに骨からの
メッセージは体の免疫力を高め、私たち
を病気から守ってくれることも明らか
になったのです。
逆に言えば、骨からのメッセージが途絶え
た時、記憶力や免疫力、筋力の低下などが
起こり、まるで命のスイッチを切るかの
ように、老化現象が加速してしまうのです。
研究者の言葉
骨が健康な状態である限り、体の臓器の
若さは保たれます。骨は人体の若さをつか
さどる門番なのです。
骨が出す最高の若返り物質、その驚きの
パワーを知れば、あなたの若さが呼び覚ま
されるのです。
骨折自慢の出演者たち
石田明(NON STYLE)(12か所骨折)
藤井隆(7か所骨折)
木村佳乃(左手首骨折)
山中教授も10回骨折(ラグビー、柔道で)
しているそうです。
人間の体に骨はいくつあるか?
大体200個あります。
老化のスイッチは骨にあり!?
骨量低下の恐ろしさ
米国を代表する自転車競技選手だった
ブレイク・コールドウェルさん(33歳)の例
19歳でプロになり、数々のレースで入賞し
全米選手権で準優勝の経験がありますが、
そのキャリアの絶頂期に骨の異常が見つ
かり、引退を余儀なくされたのです。
きっかけは、競技外のちょっとした転倒
での大腿骨近位部の骨折でした。
過酷なレースに耐えてきたアスリートが
軽く転倒しただけで、なぜ重度の骨折を
したのか?
当時、コールドウェルさんは25歳、検査を
したところ、骨の密度である骨量が極端に
低い(80歳の骨量しかない)ことがわかり
ました。
骨量が低下すると骨の内部がスカスカに
なり、骨折しやすくなりますが、高齢者の
場合、大腿骨の骨折をきっかけに4~5人に
1人が1年以内に命を落しているという
衝撃のデータがあります。
原因のひとつは、骨の出すメッセージ物質
にあることがわかりました。
骨量が低下すると若さを生み出すメッセージ
物質が出なくなり、全身の老化が急速に進ん
でしまう可能性があるのです。
コールドウェルさんの主治医の話
骨が果たす役割は単に体を支えるだけで
はなく、全身に向けて様々なメッセージ
物質を送る立派な臓器でもあるのです。
ですから、骨が弱るとそれにより骨から
のメッセージが減り、様々な老化現象が
進んでしまうのです。
骨が出すメッセージとは
1 記憶力
最近、新しいことが覚えられない人
↓
骨が出すメッセージ物質が不足して
いるせいかもしれません。
米国コロンビア大学の
ジェラール・カーセンティ教授は
骨が脳に向けて発する、あるメッセージ
物質を発見しました。
それは、オステオカルシンという
メッセージ物質です。
この10万分の1ミリにも満たない小さな
粒が、私たちの記憶力をつかさどる重要
な働きをしているというのです。
遺伝的にオステオカルシンを作れない
マウスと通常のマウスで実験
水槽内に島を作り、島にたどり着くまで
の時間を測定しました。
1回目の実験では両方、ほとんど同時の
80~90秒でした。
実験の回数を重ねると、通常のマウスの
場合4秒でたどり着けるようになりました。
一方、オステオカルシンを作れないマウス
は、回数を重ねても90秒程かかりました。
通常のマウスが、時間短縮できたのに対し
オステオカルシンを作れないマウスの方は
ほとんど短縮できなかったのです。
いったい、なぜなのか?
カーセンティ教授がマウスの脳を詳細に
調べたところ、オステオカルシンを作れ
ないマウスでは、新たな記憶を蓄える海馬
が小さくなっていたのです。
島の位置を記憶できないのは、骨から
オステオカルシンが出ないため海馬の働き
が低下したためだと、教授は考えています。
2 免疫力
日本人の主要死因のがんや肺炎、こうした
病の原因になるのが、免疫力の低下です。
実は、そこにも骨の出すメッセージ物質
が関係しているというのです。
ドイツ ウルム大学
ハームット・ガイガー教授
(老化のメカニズムを研究)
ガイガー博士は、年老いたマウスでは骨が
出す、オステオポンチンというメッセージ
物質が減少していることを発見しました。
この物質にも若さにかかわるメッセージ
が秘められているのではないかと、博士は
オステオポンチンを与えたマウスとそうで
ないマウスの二つのグループで実験した
結果、5カ月後、オステオポンチンを与え
たマウスに大きな変化が現れました。
↓
免疫細胞の量が倍近くにまで増加した。
オステオポンチンのメッセージは、言わば
免疫力をアップせよということ。
このメッセージが免疫細胞のもとになる
細胞に届くと、生まれてくる免疫細胞の
量が増え、体全体の免疫力を根本から
アップさせていることがわかったのです。
山中メモ
今は、マウスによる研究段階
オステオポンチンは状況により、働きが
変わる可能性があり、研究が進められて
いる。
その他の骨によるメッセージ
山中メモ
・オステオカルシンには、筋肉のエネルギー
効率を高める働きもある。
・オステオカルシンには、テストステロン
という男性ホルモンを増やす働きがあり
オステオカルシンがないと、精子の数が
減るという研究もある。
骨は若さを司る臓器
さらに、骨自身が自分の強さを決める
メッセージを出すとは?
骨を強くするメッセージ物質とはどんな
ものなのか
手掛かりは、南アフリカのある地域に
集中している難病の研究にあった。
患者の一人
ティモシー・ドレイヤーさん(27歳)
硬結性骨化症という、骨が異常に増え
続ける病気で、症例は少なく、今まで
80例しか見つかっていません。
頭蓋骨が増え続けるため、内側にある
脳を圧迫し、聴覚や視覚に障害を引き
起します。
ドレイヤーさんは、4年に1度、頭蓋骨
を外し、増え続ける骨を内側から削る
手術を受けてきました。
本人の話
初めての手術は8歳のときで、本当に
つらい手術です。
頭蓋骨を開けた後は動くどころか
しゃべることすらできません。
二度と経験したくないと毎回祈っ
ています。
なぜ、ドレイヤーさんの骨は増え続け
てしまうのか?
主治医のハーマン・ハメルズマ博士は
50年にわたりこの難病の解明に挑み
続け、ついに骨が出すあるメッセージ
物質にたどり着きました。
患者の体内にスクレロスチンという
メッセージ物質が欠如していること
を突き止めたのです。
スクレロスチンが発するのは
「骨を作るのをやめよう!」という
メッセージで、体内の骨の量を
コントロールしています。
主治医のハーマン・ハメルズマ
博士の話
スクレロスチンの発見は医学会に
とって大ニュースでした。謎の病を
きっかけに骨の量をコントロールする
メッセージ物質が特定できたのです。
ドレイヤーさんの体内には
スクレロスチンが全くありません。
そのため、骨が増え続けたのです。
逆に、骨が減り続けていた
自転車選手コールドウェルさんの
場合はスクロレスチンが大発生して
いたと考えられます。
このメッセージ物質をコントロール
できれば、骨を健康にして全身を若く
保つことができる、そんな期待が高ま
っています。
骨の作り替え
疲労骨折を防ぐために常に新しい骨に
替えています。
また、骨はカルシュウムの貯蔵庫でも
あるので、カルシュウムを体に放出する
ためにも、自分をいったん壊す必要が
あり、3~5年で全部入れ替わります。
そこでは、スクレロスチンはブレーキ役
になりますが、逆に骨を作るアクセル
役もいます。
骨を壊す細胞を破骨細胞、骨を作る細胞
を骨芽細胞と言い、それぞれメッセージ
物質の指示により、骨を作ったり作るの
をやめたりしています。
それでは、それぞれのメッセージ物質は
どこから出ているのでしょうか?
↓
骨の中にある骨細胞です。
その数、全身で数百億の骨細胞たちが
メッセージ物質の量を調整することで
骨の作られ方が決まります。
復習
若さを生み出す4つのメッセージとは?
記憶力、免疫力、精力、筋力 です。
それでは、そのメッセージを出す細胞は?
↓
骨芽細胞です。
骨を作る骨芽細胞には、メッセージ物質
を出す役割もあったのです。
骨芽細胞が出したメッセージは、血管を
通じて全身の臓器へと送られます。
山中メモ
高齢者で骨折をきっかけに認知症など
老化現象が一気に進むことがある。
骨を強くして若さを手に入れる方法は?
骨の異常のため引退を余儀なくされた
自転車選手のコールドウェルさん
メッセージ物質の異常により、骨の建設
のバランスが崩れ、老化が進む危険に晒さ
れています。
なぜ、メッセージ物質の異常が起きたのか?
それを解明することで、再び若さを取り
戻す答えが見つかりつつあります。
運動と骨量の関係を研究する米国
ミズーリ大学パメラ・ヒントン准教授に
コールドウェルさんのケースの分析を
依頼した結果
コールドウェルさんの場合はおそらく
自転車が原因の一つです。
幼少期から自転車に乗り続けたことが
事態を悪化させた可能性があります。
(無駄な筋肉がついて体重が増えないよう
に、ランニングなど他の運動は控えた。)
この偏った運動習慣が、骨に異常をも
たらすことにつながったのではないか。
ヒントン准教授は、一般の人でも運動
習慣によって、骨量に違いが出るかどう
かを調査しました。
結果は
20~50代の男性で健康維持のため
週6時間以上 ランニングをする人たち
の骨量の低い人の割合は、全体の19%
自転車に乗っているグループの骨量の
低い人の割合は、63%でした
なぜ、自転車に長時間乗っている人た
ちの骨量が低いのか?
ヒントン准教授がたどり着いた答えは
骨に伝わる衝撃の違いでした。
骨は、衝撃を感知すると骨の量を増やし
ます。自転車とランニングの違いは、骨に
衝撃がかかるかどうかです。
自転車をこいでも、骨には衝撃が伝わり
ません。体重が自転車によって支えられて
いるので骨への衝撃といった点では、ただ
座っているのと同じなのです。
骨量を増やすのに欠かせない骨への衝撃
ヒントン准教授は、骨量が低い人たちに
ジャンプ運動をしてもらい、骨に衝撃を
与え続ける実験(1日30分を週3回、1年間)
を行った結果
↓
19人の内18人に骨量の上昇、ブレーキ役の
スクレロスチンの減少が見られました。
骨に衝撃がかかると、体の中で何が起き
るのか?
骨に伝わる衝撃を感知するのは、固い柱
の中に隠れていたあの骨細胞です。
骨細胞が言わば、衝撃センサーの役割を
しているのです。
骨細胞は、互いに結びつき骨の中に
ネットワークを張り巡らせています。
このネットワークで体にかかった衝撃を
敏感に感知します。
衝撃を感知すると、骨細胞は骨を作るのを
やめようというブレーキ役のメッセージの
量を減らし、代わりに骨を作ってという
アクセル役のメッセージを増やして骨芽細胞
の数を増やします。
骨は、私たちが活動的に動いている限り
骨芽細胞からメッセージ物質をたくさん
出して、全身を若く保ってくれるのです。
ところが、私たちが活動をやめると、逆に
骨はもはや若さを保つ必要はないと判断し
メッセージを止めてしまうのです。
一日中座り続けていると、若さを保つ
メッセージが途絶えるかもしれません。
米国コロンビア大学の
ジェラール・カーセンティ教授の話
なぜ、骨が衝撃を感知する役割と臓器の
若さを保つという二つの役割を担ったのか?
それは、進化の過程で活動的な個体を残ら
せるためです。
狩りをする筋力、記憶力、子孫を残す精力
全てが必要です。
骨は、私たちの活動状態を見張り、若さを
保つ判断をします。
いわば、人体の若さの門番なのです。
山中メモ
自転車は非常に良い運動です。
心肺機能アップ、メタボ予防、筋力アップ
につながります。
ただ、骨を刺激するという点ではあまり
効果的ではありません。
石田(NON STYLE)のコメント
骨折したとき、日光をよく浴びて歩く
ように言われました。
山中メモ
歩くのは非常に良いです。高齢者の
場合は、水中ウォーキング、ストレッチ
ヨガも効果があります。
骨は、活発な動きを感じ取り
「活発な個体」を応援します。
現代の生活は、活発さを忘れ、進化に
逆らっていると言えます。
骨が減り始めていた自転車選手の
コールドウェルさんのその後
骨折の危険に配慮しながら、骨に刺激
を与える運動を始めました。
運動を始めて1年、骨量が少しずつ上がり
骨の持つパワーを取り戻し始めています。
骨が増え続けていた硬結性骨化症患者の
ティモシー・ドレイヤーさんのその後
ドレイヤーさんは、大学院で分子生物学
を学び、その知識を活かし、スクレロスチン
を研究している、大手製薬会社で働き始め
ました。
スクレロスチンをコントロールすること
で、骨粗しょう症の新薬を開発しようとし
ています。
開発のきっかけは、ドレイヤーさんたちの
難病によって、スクレロスチンが発見され
たこと、骨が持つパワーをさらに解明した
い、そしてその成果が多くの人の救いに
なってほしいと、ドレイヤーさんは考えて
います。
ドレイヤーさんのコメント
僕たちの病気がきっかけで、骨量不足の
多くの人たちの薬が開発されるなら
僕が耐えてきた手術や苦しみも少しは
救われます。
科学の限界を押し上げ、骨についてもっ
と理解したいと思っています。
人生を意味のあるものにできたと、信じ
たいんです。
以上
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骨が出す最高の若返り物質
タモリ
骨なんて、体を支える単なる棒切れだと
思っていませんか。
どうやら、違うらしいんです。
何んと、脳や筋肉など全身の臓器に特別
な物質を届け、人体の若さを生み出して
いるのが骨だというのです。
ナレーター
カチカチのカルシュウムの固まりだと
思われがちな骨ですが、その中は以外
にも隙間だらけです。
そして、よく見るとそこにはたくさんの
細胞たちがうごめいています。
実は、この細胞たちが発している特別な
物質が、メッセージとして全身に届けら
れ、私たちの若さを生み出していること
が、最新の研究でわかってきたのです。
骨からのメッセージ物質が脳に届くと
何んと記憶力をアップ、さらに骨からの
メッセージは体の免疫力を高め、私たち
を病気から守ってくれることも明らか
になったのです。
逆に言えば、骨からのメッセージが途絶え
た時、記憶力や免疫力、筋力の低下などが
起こり、まるで命のスイッチを切るかの
ように、老化現象が加速してしまうのです。
研究者の言葉
骨が健康な状態である限り、体の臓器の
若さは保たれます。骨は人体の若さをつか
さどる門番なのです。
骨が出す最高の若返り物質、その驚きの
パワーを知れば、あなたの若さが呼び覚ま
されるのです。
骨折自慢の出演者たち
石田明(NON STYLE)(12か所骨折)
藤井隆(7か所骨折)
木村佳乃(左手首骨折)
山中教授も10回骨折(ラグビー、柔道で)
しているそうです。
人間の体に骨はいくつあるか?
大体200個あります。
老化のスイッチは骨にあり!?
骨量低下の恐ろしさ
米国を代表する自転車競技選手だった
ブレイク・コールドウェルさん(33歳)の例
19歳でプロになり、数々のレースで入賞し
全米選手権で準優勝の経験がありますが、
そのキャリアの絶頂期に骨の異常が見つ
かり、引退を余儀なくされたのです。
きっかけは、競技外のちょっとした転倒
での大腿骨近位部の骨折でした。
過酷なレースに耐えてきたアスリートが
軽く転倒しただけで、なぜ重度の骨折を
したのか?
当時、コールドウェルさんは25歳、検査を
したところ、骨の密度である骨量が極端に
低い(80歳の骨量しかない)ことがわかり
ました。
骨量が低下すると骨の内部がスカスカに
なり、骨折しやすくなりますが、高齢者の
場合、大腿骨の骨折をきっかけに4~5人に
1人が1年以内に命を落しているという
衝撃のデータがあります。
原因のひとつは、骨の出すメッセージ物質
にあることがわかりました。
骨量が低下すると若さを生み出すメッセージ
物質が出なくなり、全身の老化が急速に進ん
でしまう可能性があるのです。
コールドウェルさんの主治医の話
骨が果たす役割は単に体を支えるだけで
はなく、全身に向けて様々なメッセージ
物質を送る立派な臓器でもあるのです。
ですから、骨が弱るとそれにより骨から
のメッセージが減り、様々な老化現象が
進んでしまうのです。
骨が出すメッセージとは
1 記憶力
最近、新しいことが覚えられない人
↓
骨が出すメッセージ物質が不足して
いるせいかもしれません。
米国コロンビア大学の
ジェラール・カーセンティ教授は
骨が脳に向けて発する、あるメッセージ
物質を発見しました。
それは、オステオカルシンという
メッセージ物質です。
この10万分の1ミリにも満たない小さな
粒が、私たちの記憶力をつかさどる重要
な働きをしているというのです。
遺伝的にオステオカルシンを作れない
マウスと通常のマウスで実験
水槽内に島を作り、島にたどり着くまで
の時間を測定しました。
1回目の実験では両方、ほとんど同時の
80~90秒でした。
実験の回数を重ねると、通常のマウスの
場合4秒でたどり着けるようになりました。
一方、オステオカルシンを作れないマウス
は、回数を重ねても90秒程かかりました。
通常のマウスが、時間短縮できたのに対し
オステオカルシンを作れないマウスの方は
ほとんど短縮できなかったのです。
いったい、なぜなのか?
カーセンティ教授がマウスの脳を詳細に
調べたところ、オステオカルシンを作れ
ないマウスでは、新たな記憶を蓄える海馬
が小さくなっていたのです。
島の位置を記憶できないのは、骨から
オステオカルシンが出ないため海馬の働き
が低下したためだと、教授は考えています。
2 免疫力
日本人の主要死因のがんや肺炎、こうした
病の原因になるのが、免疫力の低下です。
実は、そこにも骨の出すメッセージ物質
が関係しているというのです。
ドイツ ウルム大学
ハームット・ガイガー教授
(老化のメカニズムを研究)
ガイガー博士は、年老いたマウスでは骨が
出す、オステオポンチンというメッセージ
物質が減少していることを発見しました。
この物質にも若さにかかわるメッセージ
が秘められているのではないかと、博士は
オステオポンチンを与えたマウスとそうで
ないマウスの二つのグループで実験した
結果、5カ月後、オステオポンチンを与え
たマウスに大きな変化が現れました。
↓
免疫細胞の量が倍近くにまで増加した。
オステオポンチンのメッセージは、言わば
免疫力をアップせよということ。
このメッセージが免疫細胞のもとになる
細胞に届くと、生まれてくる免疫細胞の
量が増え、体全体の免疫力を根本から
アップさせていることがわかったのです。
山中メモ
今は、マウスによる研究段階
オステオポンチンは状況により、働きが
変わる可能性があり、研究が進められて
いる。
その他の骨によるメッセージ
山中メモ
・オステオカルシンには、筋肉のエネルギー
効率を高める働きもある。
・オステオカルシンには、テストステロン
という男性ホルモンを増やす働きがあり
オステオカルシンがないと、精子の数が
減るという研究もある。
骨は若さを司る臓器
さらに、骨自身が自分の強さを決める
メッセージを出すとは?
骨を強くするメッセージ物質とはどんな
ものなのか
手掛かりは、南アフリカのある地域に
集中している難病の研究にあった。
患者の一人
ティモシー・ドレイヤーさん(27歳)
硬結性骨化症という、骨が異常に増え
続ける病気で、症例は少なく、今まで
80例しか見つかっていません。
頭蓋骨が増え続けるため、内側にある
脳を圧迫し、聴覚や視覚に障害を引き
起します。
ドレイヤーさんは、4年に1度、頭蓋骨
を外し、増え続ける骨を内側から削る
手術を受けてきました。
本人の話
初めての手術は8歳のときで、本当に
つらい手術です。
頭蓋骨を開けた後は動くどころか
しゃべることすらできません。
二度と経験したくないと毎回祈っ
ています。
なぜ、ドレイヤーさんの骨は増え続け
てしまうのか?
主治医のハーマン・ハメルズマ博士は
50年にわたりこの難病の解明に挑み
続け、ついに骨が出すあるメッセージ
物質にたどり着きました。
患者の体内にスクレロスチンという
メッセージ物質が欠如していること
を突き止めたのです。
スクレロスチンが発するのは
「骨を作るのをやめよう!」という
メッセージで、体内の骨の量を
コントロールしています。
主治医のハーマン・ハメルズマ
博士の話
スクレロスチンの発見は医学会に
とって大ニュースでした。謎の病を
きっかけに骨の量をコントロールする
メッセージ物質が特定できたのです。
ドレイヤーさんの体内には
スクレロスチンが全くありません。
そのため、骨が増え続けたのです。
逆に、骨が減り続けていた
自転車選手コールドウェルさんの
場合はスクロレスチンが大発生して
いたと考えられます。
このメッセージ物質をコントロール
できれば、骨を健康にして全身を若く
保つことができる、そんな期待が高ま
っています。
骨の作り替え
疲労骨折を防ぐために常に新しい骨に
替えています。
また、骨はカルシュウムの貯蔵庫でも
あるので、カルシュウムを体に放出する
ためにも、自分をいったん壊す必要が
あり、3~5年で全部入れ替わります。
そこでは、スクレロスチンはブレーキ役
になりますが、逆に骨を作るアクセル
役もいます。
骨を壊す細胞を破骨細胞、骨を作る細胞
を骨芽細胞と言い、それぞれメッセージ
物質の指示により、骨を作ったり作るの
をやめたりしています。
それでは、それぞれのメッセージ物質は
どこから出ているのでしょうか?
↓
骨の中にある骨細胞です。
その数、全身で数百億の骨細胞たちが
メッセージ物質の量を調整することで
骨の作られ方が決まります。
復習
若さを生み出す4つのメッセージとは?
記憶力、免疫力、精力、筋力 です。
それでは、そのメッセージを出す細胞は?
↓
骨芽細胞です。
骨を作る骨芽細胞には、メッセージ物質
を出す役割もあったのです。
骨芽細胞が出したメッセージは、血管を
通じて全身の臓器へと送られます。
山中メモ
高齢者で骨折をきっかけに認知症など
老化現象が一気に進むことがある。
骨を強くして若さを手に入れる方法は?
骨の異常のため引退を余儀なくされた
自転車選手のコールドウェルさん
メッセージ物質の異常により、骨の建設
のバランスが崩れ、老化が進む危険に晒さ
れています。
なぜ、メッセージ物質の異常が起きたのか?
それを解明することで、再び若さを取り
戻す答えが見つかりつつあります。
運動と骨量の関係を研究する米国
ミズーリ大学パメラ・ヒントン准教授に
コールドウェルさんのケースの分析を
依頼した結果
コールドウェルさんの場合はおそらく
自転車が原因の一つです。
幼少期から自転車に乗り続けたことが
事態を悪化させた可能性があります。
(無駄な筋肉がついて体重が増えないよう
に、ランニングなど他の運動は控えた。)
この偏った運動習慣が、骨に異常をも
たらすことにつながったのではないか。
ヒントン准教授は、一般の人でも運動
習慣によって、骨量に違いが出るかどう
かを調査しました。
結果は
20~50代の男性で健康維持のため
週6時間以上 ランニングをする人たち
の骨量の低い人の割合は、全体の19%
自転車に乗っているグループの骨量の
低い人の割合は、63%でした
なぜ、自転車に長時間乗っている人た
ちの骨量が低いのか?
ヒントン准教授がたどり着いた答えは
骨に伝わる衝撃の違いでした。
骨は、衝撃を感知すると骨の量を増やし
ます。自転車とランニングの違いは、骨に
衝撃がかかるかどうかです。
自転車をこいでも、骨には衝撃が伝わり
ません。体重が自転車によって支えられて
いるので骨への衝撃といった点では、ただ
座っているのと同じなのです。
骨量を増やすのに欠かせない骨への衝撃
ヒントン准教授は、骨量が低い人たちに
ジャンプ運動をしてもらい、骨に衝撃を
与え続ける実験(1日30分を週3回、1年間)
を行った結果
↓
19人の内18人に骨量の上昇、ブレーキ役の
スクレロスチンの減少が見られました。
骨に衝撃がかかると、体の中で何が起き
るのか?
骨に伝わる衝撃を感知するのは、固い柱
の中に隠れていたあの骨細胞です。
骨細胞が言わば、衝撃センサーの役割を
しているのです。
骨細胞は、互いに結びつき骨の中に
ネットワークを張り巡らせています。
このネットワークで体にかかった衝撃を
敏感に感知します。
衝撃を感知すると、骨細胞は骨を作るのを
やめようというブレーキ役のメッセージの
量を減らし、代わりに骨を作ってという
アクセル役のメッセージを増やして骨芽細胞
の数を増やします。
骨は、私たちが活動的に動いている限り
骨芽細胞からメッセージ物質をたくさん
出して、全身を若く保ってくれるのです。
ところが、私たちが活動をやめると、逆に
骨はもはや若さを保つ必要はないと判断し
メッセージを止めてしまうのです。
一日中座り続けていると、若さを保つ
メッセージが途絶えるかもしれません。
米国コロンビア大学の
ジェラール・カーセンティ教授の話
なぜ、骨が衝撃を感知する役割と臓器の
若さを保つという二つの役割を担ったのか?
それは、進化の過程で活動的な個体を残ら
せるためです。
狩りをする筋力、記憶力、子孫を残す精力
全てが必要です。
骨は、私たちの活動状態を見張り、若さを
保つ判断をします。
いわば、人体の若さの門番なのです。
山中メモ
自転車は非常に良い運動です。
心肺機能アップ、メタボ予防、筋力アップ
につながります。
ただ、骨を刺激するという点ではあまり
効果的ではありません。
石田(NON STYLE)のコメント
骨折したとき、日光をよく浴びて歩く
ように言われました。
山中メモ
歩くのは非常に良いです。高齢者の
場合は、水中ウォーキング、ストレッチ
ヨガも効果があります。
骨は、活発な動きを感じ取り
「活発な個体」を応援します。
現代の生活は、活発さを忘れ、進化に
逆らっていると言えます。
骨が減り始めていた自転車選手の
コールドウェルさんのその後
骨折の危険に配慮しながら、骨に刺激
を与える運動を始めました。
運動を始めて1年、骨量が少しずつ上がり
骨の持つパワーを取り戻し始めています。
骨が増え続けていた硬結性骨化症患者の
ティモシー・ドレイヤーさんのその後
ドレイヤーさんは、大学院で分子生物学
を学び、その知識を活かし、スクレロスチン
を研究している、大手製薬会社で働き始め
ました。
スクレロスチンをコントロールすること
で、骨粗しょう症の新薬を開発しようとし
ています。
開発のきっかけは、ドレイヤーさんたちの
難病によって、スクレロスチンが発見され
たこと、骨が持つパワーをさらに解明した
い、そしてその成果が多くの人の救いに
なってほしいと、ドレイヤーさんは考えて
います。
ドレイヤーさんのコメント
僕たちの病気がきっかけで、骨量不足の
多くの人たちの薬が開発されるなら
僕が耐えてきた手術や苦しみも少しは
救われます。
科学の限界を押し上げ、骨についてもっ
と理解したいと思っています。
人生を意味のあるものにできたと、信じ
たいんです。
以上
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