NHKスペシャル 食の起源『酒』
- 2020/02/04
- 12:10
NHKスペシャル 食の起源『酒』
(2020.2.2放送、番組内容の要約です。)
アルコールに対する遺伝子の変化
人類とアルコールとの出あい
およそ1200万年前、我々の祖先は今の
アフリカ大陸で樹上生活をしていましたが
地球規模の気候変動で大地が乾燥し、森の
木々がなくなつていきました。
食料が減っていった時に、地面に落ちて
発酵した果物、つまり、「酒になった果実」を
食べなければ生きのびることができなくな
ったのです。
そんな時、偶然にも、アルコール分解遺伝子
を獲得し、「酒になった果実」を食べられる
ものが現れ、それが生きのびて数を増やし
ていき、ゴリラ、チンパンジー、ヒトという
一部の類人猿にだけ受け継がれてきたと
考えられています。
酒が主食の民族
エチオピア南部、標高二千メートルの山岳
地帯に住むデラシャ族の人々は、酒を主食
とする独特の食文化を持っています。
パルショータというデラシャ伝統のお酒が
大好きで1日5Lも飲み、お酒以外のものは
食べません。 子供にも、アルコール度数が
低いものを飲ませます。
※ パルショータ
モロコシという穀物をすりつぶして、壺の
中で発酵させたもので、アルコール度数は
ビール程度です。
パルショータには、生きるために必要な
必須アミノ酸やビタミンが豊富に含まれて
いるそうです。
酔うために酒を飲み始めた 「意外な理由」
1万2000年前に酒造り?
今からおよそ1万2000年前、人類が農耕を始
めた歴史的な地域がトルコにあります。
人類史上最古の遺跡とされる、世界遺産の
ギョベクリ・テペの遺跡です。
直径およそ3百メートルもの範囲に高さ
5メートル以上もある巨大な柱が立ち並び
宗教的な儀式を行う神殿だったのではとも
見られています。
このような場所で、酒にまつわる意外なもの
が見つかったのです。
容積がおよそ160Lもある大きな石の器です。
この器で、祖先たちが大量の酒を造っていた
可能性があるといいます。
ドイツの考古学者による、酒造り再現実験
当時栽培していたと思われる小麦を石器で
すり潰して粉にします。
それを石の器に入れて水に浸します。
このとき、発酵しやすくするため焼いた石を
入れ温めます。
3カ月待ち
「少し、酸味があるがビールの味」と言ってい
ました。 ビールの出来上がりです。
神殿で見つかった器からもシュウ酸塩とい
う、ビールを造るときにできる物質が検出
されました。
大量に造られた酒は、人々の友好を深めるた
めに皆で飲まれた可能性があります。
神殿の建造には何百もの人が集まり、大量の
酒は異なる部族が共に酌み交わし、結束力を
生む重要な枠割を果たしたと考えられます。
人と人をつなぐ酒の力
そこには、脳の働きも深く関わる
アルコールにより、理性の働きが弱められ
警戒心が解けて気分が開放的になり、人と
打ち解けやすくなります。
酔いがもたらす効用です。
これ以降
酒は、人と人を結び社会をつくる特別な力と
して欠かせない存在となっていきます。
恐るべき「酒の魔力」
脳の血管には異物の侵入を防ぐバリアーが
ありますが、アルコールは分子が小さいため
バリアーをすり抜けて脳内に侵入してしま
います。 脳の中にはドーパミンという快楽
物質を出す脳細胞があります。
アルコールが脳内に増えるにつれて、この
細胞が興奮状態になり、ドーパミンを放出
し続けます。
快楽の暴走です。 飲みたい気持ちが止めら
れなくなるのです。
さらに強い酒を求めて
人類は
8世紀ころ、ついに究極の酒を生み出します。
蒸留酒です。
酒からアルコール分を取りだし、より度数の
高い酒を造り始めたのです。
ブランデー、スコッチウイスキー、ウォッカ
少しの量でもすぐに酔うことのできる快楽
のための酒です。
人類は、際限なく飲みたくなる生き物になっ
てしまったのです。
謎の進化
なぜ、一部のアジア人は酒に弱くなったか
稲作の広まりと関係?
欧米やアフリカ系の民族には
酒に弱い体質の人はほとんどいません。
これに対し、中国、日本、韓国などには酒に
弱い人が多いことがわかってきました。
なぜ、酒に弱い遺伝子が現れたのか?
酒を飲むと発生する毒物のアセトアルデヒド
を分解する、アセトアルデヒド分解遺伝子が
ありますが、6000年以上前、アセトアルデヒド
分解遺伝子の働きの弱い祖先が、突如中国に
出現したことがわかりました。
そして
アジアでの稲作の広まりの分布と酒に弱い
遺伝子の分布を重ね合わせると、ほぼ一致
することがわかったのです。
仮説
稲作ができるような水が近くにある環境で
人々が集合してきて衛生環境が悪化し、病気
が発生したことが影響したと考えられます。
具体的には、
分解されない毒物のアセトアルデヒドが思わ
ぬ働きをして、悪い微生物を攻撃する薬にな
ったと考えられています。
酒を飲むために必要なアセトアルデヒド分解
遺伝子の働きが弱いことが、逆に功を奏した
ことになったのです。
以後その遺伝子が、受け継がれてきたことに
なります。
現代の日本人のおよそ4割が酒に弱い
遺伝子タイプ
現在は
何千年前とちがい、衛生環境の問題もなくな
り、祖先のように悪い微生物に怯えることも
ないので、アセトアルデヒドは単なる「毒」で
しかなくなりました。
事実、酒に弱い遺伝子を持つ人が、飲酒で
頭頚部がんになる割合が3.6倍
食道がんになる割合が7.1倍にもなること
がわかってきています。
※ 酒に強い人にとっても
アセトアルデヒドは、「体の毒」です。
個人差はありますが、1日に飲むアルコール
量が約20gを超えると病気に罹るリスクが
上がっていくことがわかってきています。
1日のアルコール量20g
↓
ビール500ml程度
また、アルコール依存症になりやすいのは
酒に強い遺伝子タイプの人です。
ノンアルコール酒は救世主(酒)か?
日本では、ノンアルコールビールなどのノン
アルコール飲料が販売されていますが
健康志向の高まりもあるのか、体質的にも
アルコールに強いはずのビールの本場
ドイツでも、なんと、ノンアルコールビール
が飲まれてます。
実は、いまドイツでは400を超える醸造所が
ノンアルコールビールを開発しているそう
です。
(ドイツでは、普通のビールからアルコール
を除去する方法が主流です。)
ノンアルコール酒の驚くべきパワー?
ノンアルコール酒で酔える理由
実験
22人にノンアルコールワインをグラス1杯
飲んでもらい、その後の気分・感覚を
アンケートにより回答
さらに、リラックスの度合いを示す自律神経
の働きを計測しました。
結果
「ほろ酔い」の時と同じような精神的変化が
現れました。
カギは、その人が過去に酒を飲んだ時の脳の
記憶です。
アルコールを含む酒を飲み、脳が酔いを経験
して、それを心地よいと感じると
「酔いの快楽」が脳に記憶されます。
ノンアルコール酒を飲んだ際、本物そっくり
の見た目や香り、味わいによってその記憶が
呼び覚まされ、酔いに似た快楽をもたらすこ
とができるのではと研究者は考えています。
まとめ
答えのある問題ではないので、番組でも
「人類とお酒の切っても切れない関係は
まさに、人類進化の宿命!? あなたは今夜
どんな一杯を楽しみますか?」
と結んでいました。
人類が生きのびるためには、外的環境に応じ
て変化しなければならず、その変化に適応で
きたものの遺伝子が受け継がれてきました。
このように考えると、1200万年前とは異な
り、これからの時代、酒(アルコール)という
ものの意味はあまりなくなるのではないか
と、個人的には考えます。
意味がなければ、あまり飲まなくなっていき
飲まなければ、あえて、毒物を分解する必要
もなく、必要なければ、毒物分解遺伝子も
弱まり、いずれ消えていくかもしれません。
以上
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(2020.2.2放送、番組内容の要約です。)
アルコールに対する遺伝子の変化
人類とアルコールとの出あい
およそ1200万年前、我々の祖先は今の
アフリカ大陸で樹上生活をしていましたが
地球規模の気候変動で大地が乾燥し、森の
木々がなくなつていきました。
食料が減っていった時に、地面に落ちて
発酵した果物、つまり、「酒になった果実」を
食べなければ生きのびることができなくな
ったのです。
そんな時、偶然にも、アルコール分解遺伝子
を獲得し、「酒になった果実」を食べられる
ものが現れ、それが生きのびて数を増やし
ていき、ゴリラ、チンパンジー、ヒトという
一部の類人猿にだけ受け継がれてきたと
考えられています。
酒が主食の民族
エチオピア南部、標高二千メートルの山岳
地帯に住むデラシャ族の人々は、酒を主食
とする独特の食文化を持っています。
パルショータというデラシャ伝統のお酒が
大好きで1日5Lも飲み、お酒以外のものは
食べません。 子供にも、アルコール度数が
低いものを飲ませます。
※ パルショータ
モロコシという穀物をすりつぶして、壺の
中で発酵させたもので、アルコール度数は
ビール程度です。
パルショータには、生きるために必要な
必須アミノ酸やビタミンが豊富に含まれて
いるそうです。
酔うために酒を飲み始めた 「意外な理由」
1万2000年前に酒造り?
今からおよそ1万2000年前、人類が農耕を始
めた歴史的な地域がトルコにあります。
人類史上最古の遺跡とされる、世界遺産の
ギョベクリ・テペの遺跡です。
直径およそ3百メートルもの範囲に高さ
5メートル以上もある巨大な柱が立ち並び
宗教的な儀式を行う神殿だったのではとも
見られています。
このような場所で、酒にまつわる意外なもの
が見つかったのです。
容積がおよそ160Lもある大きな石の器です。
この器で、祖先たちが大量の酒を造っていた
可能性があるといいます。
ドイツの考古学者による、酒造り再現実験
当時栽培していたと思われる小麦を石器で
すり潰して粉にします。
それを石の器に入れて水に浸します。
このとき、発酵しやすくするため焼いた石を
入れ温めます。
3カ月待ち
「少し、酸味があるがビールの味」と言ってい
ました。 ビールの出来上がりです。
神殿で見つかった器からもシュウ酸塩とい
う、ビールを造るときにできる物質が検出
されました。
大量に造られた酒は、人々の友好を深めるた
めに皆で飲まれた可能性があります。
神殿の建造には何百もの人が集まり、大量の
酒は異なる部族が共に酌み交わし、結束力を
生む重要な枠割を果たしたと考えられます。
人と人をつなぐ酒の力
そこには、脳の働きも深く関わる
アルコールにより、理性の働きが弱められ
警戒心が解けて気分が開放的になり、人と
打ち解けやすくなります。
酔いがもたらす効用です。
これ以降
酒は、人と人を結び社会をつくる特別な力と
して欠かせない存在となっていきます。
恐るべき「酒の魔力」
脳の血管には異物の侵入を防ぐバリアーが
ありますが、アルコールは分子が小さいため
バリアーをすり抜けて脳内に侵入してしま
います。 脳の中にはドーパミンという快楽
物質を出す脳細胞があります。
アルコールが脳内に増えるにつれて、この
細胞が興奮状態になり、ドーパミンを放出
し続けます。
快楽の暴走です。 飲みたい気持ちが止めら
れなくなるのです。
さらに強い酒を求めて
人類は
8世紀ころ、ついに究極の酒を生み出します。
蒸留酒です。
酒からアルコール分を取りだし、より度数の
高い酒を造り始めたのです。
ブランデー、スコッチウイスキー、ウォッカ
少しの量でもすぐに酔うことのできる快楽
のための酒です。
人類は、際限なく飲みたくなる生き物になっ
てしまったのです。
謎の進化
なぜ、一部のアジア人は酒に弱くなったか
稲作の広まりと関係?
欧米やアフリカ系の民族には
酒に弱い体質の人はほとんどいません。
これに対し、中国、日本、韓国などには酒に
弱い人が多いことがわかってきました。
なぜ、酒に弱い遺伝子が現れたのか?
酒を飲むと発生する毒物のアセトアルデヒド
を分解する、アセトアルデヒド分解遺伝子が
ありますが、6000年以上前、アセトアルデヒド
分解遺伝子の働きの弱い祖先が、突如中国に
出現したことがわかりました。
そして
アジアでの稲作の広まりの分布と酒に弱い
遺伝子の分布を重ね合わせると、ほぼ一致
することがわかったのです。
仮説
稲作ができるような水が近くにある環境で
人々が集合してきて衛生環境が悪化し、病気
が発生したことが影響したと考えられます。
具体的には、
分解されない毒物のアセトアルデヒドが思わ
ぬ働きをして、悪い微生物を攻撃する薬にな
ったと考えられています。
酒を飲むために必要なアセトアルデヒド分解
遺伝子の働きが弱いことが、逆に功を奏した
ことになったのです。
以後その遺伝子が、受け継がれてきたことに
なります。
現代の日本人のおよそ4割が酒に弱い
遺伝子タイプ
現在は
何千年前とちがい、衛生環境の問題もなくな
り、祖先のように悪い微生物に怯えることも
ないので、アセトアルデヒドは単なる「毒」で
しかなくなりました。
事実、酒に弱い遺伝子を持つ人が、飲酒で
頭頚部がんになる割合が3.6倍
食道がんになる割合が7.1倍にもなること
がわかってきています。
※ 酒に強い人にとっても
アセトアルデヒドは、「体の毒」です。
個人差はありますが、1日に飲むアルコール
量が約20gを超えると病気に罹るリスクが
上がっていくことがわかってきています。
1日のアルコール量20g
↓
ビール500ml程度
また、アルコール依存症になりやすいのは
酒に強い遺伝子タイプの人です。
ノンアルコール酒は救世主(酒)か?
日本では、ノンアルコールビールなどのノン
アルコール飲料が販売されていますが
健康志向の高まりもあるのか、体質的にも
アルコールに強いはずのビールの本場
ドイツでも、なんと、ノンアルコールビール
が飲まれてます。
実は、いまドイツでは400を超える醸造所が
ノンアルコールビールを開発しているそう
です。
(ドイツでは、普通のビールからアルコール
を除去する方法が主流です。)
ノンアルコール酒の驚くべきパワー?
ノンアルコール酒で酔える理由
実験
22人にノンアルコールワインをグラス1杯
飲んでもらい、その後の気分・感覚を
アンケートにより回答
さらに、リラックスの度合いを示す自律神経
の働きを計測しました。
結果
「ほろ酔い」の時と同じような精神的変化が
現れました。
カギは、その人が過去に酒を飲んだ時の脳の
記憶です。
アルコールを含む酒を飲み、脳が酔いを経験
して、それを心地よいと感じると
「酔いの快楽」が脳に記憶されます。
ノンアルコール酒を飲んだ際、本物そっくり
の見た目や香り、味わいによってその記憶が
呼び覚まされ、酔いに似た快楽をもたらすこ
とができるのではと研究者は考えています。
まとめ
答えのある問題ではないので、番組でも
「人類とお酒の切っても切れない関係は
まさに、人類進化の宿命!? あなたは今夜
どんな一杯を楽しみますか?」
と結んでいました。
人類が生きのびるためには、外的環境に応じ
て変化しなければならず、その変化に適応で
きたものの遺伝子が受け継がれてきました。
このように考えると、1200万年前とは異な
り、これからの時代、酒(アルコール)という
ものの意味はあまりなくなるのではないか
と、個人的には考えます。
意味がなければ、あまり飲まなくなっていき
飲まなければ、あえて、毒物を分解する必要
もなく、必要なければ、毒物分解遺伝子も
弱まり、いずれ消えていくかもしれません。
以上
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